うつ病 Depression

 うつ病は、特にはっきりした身体の病気もないのに、身体も心も調子が悪く、日常生活に支障をきたす病気です。 うつ病は、ストレスにさらされれば、誰でもなる可能性がある病気で、「ココロの風邪」のようなものです。女性では4〜5人に1人、男性ではその半分程度の人が、一生のうちで一度はうつ病になると言われています。
 ほぼ必ず治る病気ですので、なっても心配はいりませんが、自殺だけは注意しなければいけません。日本では毎年、3万人以上の人が自殺で亡くなっていますが、その半分以上が、うつ病による自殺だと思われます。

症状

・抑うつ気分
  一日中いやな気分が続き、朝起きた時が一番ひどく、どんなに好きなことをしてもまったく気が晴れません。
・食欲低下、体重減少
  食欲がなくなり、何を食べても美味しいと思えません。食事をしないために、体重が何キロも減ってしまいます。
・不眠、早朝覚醒
  夜は眠れず、朝の暗いうちから目が覚めてしまいます。
・精神運動抑制、決断困難
  頭も働くなってしまい、本を読もうとしても頭に入りません。いつもならさっと決められることが、迷ってしまってなかなか決められません。
・意欲低下
  仕事はもちろん、それまで好きだった趣味さえも、やろうという意欲がわきません。
・興味喪失
  テレビや新聞にもまったく興味がわきません。
・焦燥
  気持ちが落ち着かず、立ったり座ったりして落ち着きがなくなることもあります。
・微小念慮
  物事を悪いほうにしか考えられず、自分はだめな人間だとしか思えなくなってしまいます。

・希死念慮
  死にたくなってしまいます。

 こうした症状のうち、五つ以上が2週間以上続くという、うつ病の基準を満たすほどになると、なかなか自分の力では回復するのが難しくなり、病気として治療すした方がよいわけです。
季節性うつ病
毎年冬にうつ状態になる、季節性うつ病という病気もあります。この場合、不眠、食欲低下ではなく、甘いものが欲しくなる、眠りすぎる(過眠)という症状が多くみられ、その症状は冬眠によく似ています。

治療の中で行う病気の説明と対処法

1.うつ病は病気であり、単なる怠けではない
2.できるかぎり休養をとる必要がある
3.抗うつ薬を十分量、十分な期間投与し、欠かさず服薬する
4.治療にはおよそ3ヶ月かかる
5.治療中、一進一退がある
6.決して自殺しないと約束する
7.治療が終了するまで重大な決定は延期する

家族や周囲の人の対処法

 うつ病は、えたいの知れない、出口の見えない苦しみで、患者本人にとってはとてつもなく重くのしかかるものです。ところが、身体の病気のように、熱が出る、腫れるといった目に見える症状がないので、周囲の人には、わかりにくいものです。そのため、本人に比べ、周囲の人は軽く考えがちなので、注意が必要です。
 うつ病の人に対しては、思いやりをもってやさしく接することが大切です。うつ病の人は、ふだんのような心の余裕がなくなり、もともともっていた周囲への気配りがなくなり、子供のようになってしまうこともありますが、これも病気によるものです。
 うつ病の人は、どんなに頑張ろうと思っても頑張れないことで苦しんでいるのですから、何をやっているんだ、もっと頑張れ、と叱責するのは最悪のやり方で、自殺に追い込むことすらあります。

・自殺の予防について
自殺は、うつ病における最大の問題です。重いうつ病患者は、自殺の危険がある、と思って対処しないと、取り返しのつかないことになります。
 患者さんが死にたいと言うとき、軽くあしらったり、腫れ物に触るように触れないようにしたりするのは患者さんの気持ちを尊重した対応とは言えません。むしろ、その気持ちをよく聞いて受け止めてあげたほうがよいでしょう。
 しかし、自ら自殺したいと述べ、自殺はしないと約束さえしてくれない時や、自殺するために道具を買ってくる、身の回りを片付けてしまい、周囲の人にお礼を言って回るなど、今にも自殺しそうな言動がみられたら、本当に自殺の危険が迫っていると考えたほうがよいでしょう。
 危険が迫っていると思ったら、猶予はありません。すぐにでも精神科医に相談したほうがよいでしょう。